狂犬病予防接種を毎年受ける理由

チワワのあれこれ
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狂犬病。
毎年、狂犬病予防接種を受けることは恒例となっていて、年に1回の行事としてとらえていました。
ある時ふと「狂犬病って何?」「なんで年に1回注射打つのかなあ?」と疑問に思いました。
調べてみると、法律で義務付けられている行事だということがわかりました。
日本には狂犬病予防法という法律があります。
生後91日以上の犬を飼い始めたら、役所に犬の登録をすることと、年に1回狂犬病予防接種を受けることが義務付けられています。
そして、狂犬病という病気は予防接種を義務付けるほどの重篤で深刻な病気ですが、発症前に狂犬病予防接種すれば狂犬病を予防できることがわかりました。

この年に1回の行事の大切さをちゃんと理解するために、狂犬病のことを調べてみました。

狂犬病はどんな病気?

狂犬病は狂犬病ウィルスを保有する哺乳類から哺乳類に感染してかかる、神経系のウィルス感染症です。
狂犬病という名前からどうしても犬に特化してしまいがちですが、犬だけでなく人や猫、キツネなど、哺乳類全般の病気です。

人を含めたすべての哺乳類が感染する人獣共通感染症で、日本脳炎、マラリアなどと同じ感染症法4類に分類されています。
ただし、人から人への感染は認められていないそうです。

感染性物質(通常は唾液)によって伝播することもあります。人の粘膜や新しい傷に感染性物質が直接接触することによって伝播することがあります。人が人を咬むことによる人-人感染は理論上起こり得ますが、確認されていません。

厚生労働省検疫所HP 狂犬病について – 伝播 https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2013/04081519.html

昔、1950年以前の日本でも、狂犬病が原因で人や犬が多く死亡していました。
この状況はまずいということで、狂犬病予防接種を義務づける狂犬病予防法ができました。

そして、人への感染が1956年、動物(猫)への感染が1957年を最後に、日本での狂犬病発生はなくなりました。
日本は、狂犬病予防法と検疫制度、そして、島国のため陸続きの国とは異なり狂犬病発生地域からの侵入がないこともあり、狂犬病発生清浄地域となっていると考えられています。
しかし、厚生労働省が公開しているこちらの狂犬病発生状況を見てもわかる通り、海外では多くの国で狂犬病が発生しています。
そして、日本でも狂犬病輸入症例(海外で感染し日本に渡航後発症するケース)が2020年までに4例報告されています。

日本国内で2020年に発生した狂犬病患者の報告
日本国内で2020年に発生した狂犬病患者の報告

ちなみに狂犬病という病名の由来は、埼玉県のホームページで次のように紹介されていました。

「狂犬病」という名前は、この病気に犬が感染した場合に凶暴性を示すことが多いため、人への感染源として恐れられたことから付けられた和名です。

埼玉県のHPより https://www.pref.saitama.lg.jp/b0716/doubutu-kaikata-kyoukennbyouyobou.html
トップページ > 県政情報・統計 > 県概要 > 組織案内 > 保健医療部 > 保健医療部の地域機関 > 動物指導センター > 猫・犬の飼育について > 狂犬病を予防するために

狂犬病の感染ルーツ

狂犬病ウィルスを保有する哺乳類の動物に咬まれてできた傷口から、咬んだ動物の唾液に乗ってウィルスが体内に侵入します。
また、まれなケースとしてコウモリから空気感染の疑いがある事例もあります。

日本獣医師会HP 参考:コウモリと狂犬病
参考:コウモリと狂犬病

哺乳類間での感染病ですが、人から人への感染はしません。厚生労働省HP 狂犬病に関するQ&Aについて Q9
臓器移植による感染例はあるそうですが、輸血による感染事例はないそうです。
具体的な感染源は厚生労働省検疫所のHPで次のように記載しています。

アジアやアフリカでは野犬、ヨーロッパではキツネなど、北米・中南米ではキツネ、スカンク、アライグマ、コウモリなど多くの動物(一部ペットも)が主な感染源となっています。

厚生労働省検疫所HPより https://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/dis02_03rab.html

狂犬病はどんな症状?

狂犬病ウィルスは神経症状を特徴とするウィルスで、感染後の症状は神経麻痺や過敏反応など怖いものばかりです。
狂犬病には2つの型があります。

・狂騒型の狂犬病は、運動過多、興奮、幻覚、協調性の欠如、恐水症(水に対する恐怖)および恐風症(すきま風または新鮮な空気に対する恐怖)を引き起こします。心肺停止により、数日後に死亡します。
・麻痺型の狂犬病は、ヒトの全症例の約20%を占めています。この型の狂犬病は、狂騒型ほど激しくはなく、通常、長い経過をたどります。創傷部位から徐々に筋肉が麻痺していきます。徐々に昏睡状態になり、最終的には死に至ります。狂犬病の麻痺型はしばしば誤診され、本疾患の報告数が少ない一因となっています。

厚生労働省検疫所HP 狂犬病(ファクトシート) 症状 https://www.forth.go.jp/topics/2023/2023_0131.html

次に具体的な症状の一例を犬と人に分けてご紹介します。
尚、参考にした情報はこちらです。
厚生労働省 ヒト狂犬病症例集
岩手県 <付属書> 付属書1. 狂犬病の疑いがある動物の症状と特徴
日本神経科学学会 狂犬病ウィルス基礎情報
日本ウィルス学会 狂犬病ウイルスの病原性に関する研究の進展

犬の症状

犬の狂犬病の症状は 前駆期→興奮期→麻痺期と移行します。
潜伏期間は平均1か月ですが、1週間から1年4か月の例もあります。
いったん臨床症状が現れると死亡するまでの期間は短く、15日を過ぎることはほぼないそうです。

前駆期:2~3日

・挙動不審、気まぐれ、過敏、疑い深い目付きをするなど、性格の変化と異常行動
・親しくしていた飼い主の知りあい等を避けるようになる
・飼い主に対する反抗
など

興奮期:1~7日

・目的なく徘徊したり、目に入るものを頻繁に噛むなど、落ち着きがなくなり興奮する
・食べ物ではない物を食べてしまう(小枝、わら、石、土などを食べる傾向が多い)
・急な光や音に過敏に反応する
など

麻痺期:2~3日

・神経症状
・後ろ足が麻痺して歩行不能になる
・咀嚼に関係する筋肉が麻痺して下顎が垂れ下がり、よだれを流す
・昏睡状態となり死亡する
など

人の症状

人の狂犬病の症状は、前駆期→急性神経症状期→昏睡期と移行します。
潜伏期間は咬まれた箇所や状況(皮膚を直接とか、服の上からなど)、咬まれた後の処置によってばらつきがあ

1か月~3か月が60%、15日程度の場合や最長7年という記録もあります。

前駆期:2~10日間

・発熱、食欲不振
・見た目治癒した咬まれた箇所やその周辺がチクチク痛んだりかゆくなるなど違和感がある
など

急性神経症状期:2~7日間

・強い不安感に襲われることがある
・いないはずの虫が見える幻視
・水に対する恐怖でトイレの後に手を洗うことができない
・空調の風があたることや、人がそばを歩くことに極度の不快感
・意味不明の叫びや犬の遠吠えにも似た叫び声をあげる
・全身けいれん

など

昏睡期

・昏睡
・低血圧、不整脈、呼吸不全などを起こし、呼吸停止、心停止して死亡する

狂犬病の発症を防ぐ、狂犬病ワクチン

狂犬病は発症すると治療法はなく、致死率ほぼ100%の怖い病気です。※数例ですが狂犬病から人の回復症例はあります
でも、人も犬も発症前に狂犬病ワクチンを接種すれば狂犬病を予防できます。

狂犬病ワクチン
狂犬病ワクチン こどもとおとなのワクチンサイト
ワクチンと病気について【狂犬病ワクチン】 ワクチンと病気に関する情報を簡単検索!

日本では年に1回犬に狂犬病ワクチン接種を義務付けられていて、ありがたいことに日本国内での狂犬病感染はありません。
しかし、海外には狂犬病発生国が多数あります。

もし狂犬病流行国に仕事や観光で訪問する場合は、訪問前に狂犬病ワクチンの接種を推奨されています。
そして、もし狂犬病流行国で動物と接触したら、事前に狂犬病ワクチンを接種していても医療機関を受診します。
狂犬病感染後にワクチン接種ができる医療機関は、訪問前に確認しておくといいですね。

日本は、狂犬病予防法と検疫制度、そして、島国のため陸続きの国とは異なり狂犬病発生地域からの侵入がないこともあり、狂犬病発生清浄地域となっていると考えられています。
今後も安心して犬と生活するために、狂犬病ワクチン接種は必要不可欠な対策だと思いました。

このありがたい狂犬病ワクチンを開発したのは、フランスの細菌学者のルイ・パスツールです。
栄研化学株式会社 -「得体の知れないものへの怯え」から「知れて安心」へ-(続) 第4回「狂犬病-パスツールがワクチン開発」

狂犬病ワクチン開発者 ルイ・パスツール

名言「偉大な人々は 目標を持ち そうでない人々は 願望を持つ」でルイ・パスツールをご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ルイ・パスツールは「酵母という微生物」が活動することで発酵が起こることも発見し、ビールの基本形ができたそうです。

ビールづくりは科学の時代へ - パスツール
年齢確認|キリン
年齢認証です。本サイトはお酒に関する情報を含んでいるため、20歳以上のお客様を対象としています。

安全に犬と生活ができるのも、おいしいビールが飲めるのも、ルイ・パスツールのおかげです。
ちなみに、7月6日は「ワクチンの日」です。
1885年7月6日にルイ・パスツールが9歳の男の子に狂犬病ワクチンを接種したのが成功第1例ということから、
このことを記念して、医療機器や試薬などを取り扱うBectonDickinson社の日本法人 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社が、7月6日をワクチンの日と制定しています。

認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会 「7月6日はワクチンの日」
7月6日はワクチンの日
ご存知でしたか?毎年7月6日はワクチンの日です。1885年7月6日に、近代ワクチンの父であるフランスのルイ・パスツール博士が開発した狂犬病ワクチンが、当時9歳のジョセフ・マイスター君に接種されました

まとめ

狂犬病は、狂犬病ウィルスによって神経系を脅かす恐ろしい感染症です。
犬だけでなく、猫、キツネ、コウモリなど哺乳類から哺乳類に感染します。
発症後は治療方法はなく、発症前に狂犬病ウィルスを接種することが唯一の対策法です。
海外で狂犬病に感染した人が日本に訪問し、国内で狂犬病を発症するケースはありますが、

日本では狂犬病予防法で義務付けられている年1回の犬への狂犬病ワクチン接種などによって、狂犬病の発生はありません。
もしウチのチワワ部が狂犬病に感染してしまったら、命を落としかねないですし、なにより周囲に恐怖心を与えてしまいます。
だから、絶対に狂犬病を発生させてはいけないと思いました。
様々な人々の研究と勇気によって、私たちには狂犬病ワクチンという最大の防具があるのだから、
今後も狂犬病を発生させないように、毎年必ず狂犬病ワクチン接種を受けましょう。

参考サイト
* 厚生労働省 狂犬病
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/
* 厚生労働省検疫所 疾患別解説 狂犬病
https://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/dis02_03rab.html
* 東京都感染症情報センター 狂犬病
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/rabies/
* 国立感染症研究所 狂犬病とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/394-rabies-intro.html
* 日本獣医学会 狂犬病
https://www.jsvetsci.jp/veterinary/infect/01-rabies.html
* エーザイ株式会社 狂犬病
https://www.eisai.co.jp/sustainability/atm/ntds/diseases/rabies.html
* J-STAGE 狂犬病
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnd/25/1/25_113/_pdf/-char/ja

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